第五章 第12回迷宮探検競技大会 その1


GM:さて、仕事をこなして帰ってきた君たちは町のあちこちで新しくポスターが貼られているのが目に付く。
ユレス:なんだ?
GM:「迷宮探検競技大会 開催のお知らせ」
シフォン:迷宮探検競技大会?
GM:ダンジョンに潜って、とってきた宝の価値や量で優劣を競う。手に入った宝は自分の物になるし、上位のパーティーには賞金もでる公立のイベント。
ハドソン:へぇ。
GM:期間は晩春の1日から30日までの一ヶ月間。ただ、一回出たら入り直せない。
ゼフィ:今は何日?
GM:中春の20日。
レリィナ:あと10日か……。どこかで一つ二つ仕事こなしてから行く?
ユレス:最近クラティエにばかり行ってたから、他の町へ行きたいな。(地図を見る)……このラヴィニアってどんな町だ?
GM:10年前に遷都された新公都。まだ人工はクラティエよりも少ないけど、ロシュフォール以外のほとんどの商人はこちらに本店を移してる。
ユレス:なら、仕事が多そうだな。こっちへ行こう。

というわけで、パーティーはランドイック、マルヌを通過して南下。新都ラヴィニアへ向かった。そこで、難なく2つのミッションをこなし、いろいろな成長を遂げた後、ついに競技開催地である公族領リヒトライン伯領都リヒトラントに到着した。

ユレス:変な「光の神の使い」とかいう蛇エルフに剣が折れてしまった……。(泣)
レリィナ:いいじゃん。魔化長剣買ったんだから。私はメイドのアンナさんをげっちゅ。
ゼフィ:俺も魔化グラディウス「グラディウス改」を購入!!
ヘクター:俺もいくつか霊が手に入ったけど……。この「観光ガイドの霊」って、何に使うんだ?
GM/観光ガイドの霊:「適当に便利です。分からないことがあれば呼んでください。いろいろしゃべります」
レリィナ:なるほど。GMの世界設定説明用NPCか。(笑)

GM:さて、ついに晩春の1日です。君たちは競技開催地のリヒトラントに到着しました。
ユレス:一番乗りで入りたいな。何日ぐらい潜る?
レリィナ:1日2日は短すぎるから……5日ぐらいかな?
ユレス:じゃ、食料は各自一週間ずつ買い込むように。
ヘクター:俺は二週間分買っておく! 
GM:(なんで?)

ユレス:じゃ、入るぞ。
GM:えっと、入ってすぐの部屋に看板がある。「3つの部屋を通り、大いなる極みとなせ。運を以て道を探せ。ただ、全ての物事には裏があると知れ」
レリィナ:はぁ? 意味不明だなぁ……。
ユレス:ま、いいや。進もう。
GM:正方形の部屋で、彫像が立ってます。で、奥と左右に道があって、その先も似たような部屋です。彫像の数と場所が違うけど。
ユレス:この彫像っていうのは何の像だ?
GM:(は? 像の位置が重要なんだけどな)え? え〜っと、狐(←適当)
シフォン:これは?
GM:……犬。(←適当)
ユレス:これは?
GM:……クジラ。(←適当)
シフォン:この、動物の配置になにか意味があるんじゃない?
ユレス:肉食動物と草食動物に分けてみるか?
GM:え〜っと、彫像の中には家とか乙女とかもあるんだけど。
一同:……難しいな、これ。
ユレス:しらみつぶしに全ルートを回るか。
レリィナ:そだね。
GM:(面倒くさくなったな)君たちがそうこうしていると、後ろから初心者っぽいパーティーがついてきているのに気がつく。
ユレス:何? 俺達を目印に、安全に通り抜けようってのか?
ヘクター:むかつく! 
レリィナ:よし、じゃ次の角で待ち伏せしてやろう。

しょせん初心者パーティー。先頭の戦士が不意を食らって一撃で失神し、残りは蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。

ヘクター:気絶してる戦士の額に「肉」って書いてやろう。(笑)
レリィナ:ズボン脱がせて、股の間に象さんを描くとか。(笑)
ゼフィ:仮にも皇女でしょうが。はしたない。(笑)

GM:しばらく進むと、部屋の真ん中に箱が置いてある。
ゼフィ:罠発見……(ころころ)。
GM:ない。開けると、中には「ハズレ」っていう紙が入っている。(笑)
シフォン:むかつくな……。
ユレス:ほっといて進むぞ。
GM:じゃぁ、また部屋の真ん中に箱がある。
ゼフィ:また「ハズレ」とかだったら嫌だよね。(ころころ)
GM:また「ハズレ」っていう紙が……。(笑)
ゼフィ:…………。
シフォン:罠を仕掛けなおしておく。後続の奴等が得をするのはしゃくだから。
GM:(ちゃんと係員が巡回して、仕掛けなおしているんだけどね)

GM:またしばらく進むと、同じように箱が置いてある。
シフォン:また「ハズレ」じゃないの?
ユレス:一応開けていこう。
ゼフィ:なんか無駄なような気がするなぁ。(ころころ)あ、低い。
GM:(えっ、ここで?)見つからなかった。
ゼフィ:じゃぁ、開けるか。
GM:開けるとだね、針がプスッと君の手に刺さる。
ゼフィ:げ! 毒!?
ハドソン:一応、毒物知識……。(ころろ)
GM:毒じゃないね。何かの病気っぽい……ってゆーか、君は赤痢だと思った。これから、2時間ごとに判定。失敗すると病気Lvが+1されて、Lvが4になったら気絶するので、そのつもりで。
ゼフィ:がーん……。うぅ……、腹が痛い……。
瑞子:汚い上にくさいな。さすがケダモノよ。(笑)
ゼフィ:ケダモノってゆーな!

そしてしばらくの後、結局しらみつぶしで正解ルートを発見したパーティー。

GM:道が洞窟から出た。目の前に深い谷があって、君たちが立ってるのはちょうど崖の中腹に空いた穴って感じの所。目の前には橋があって、対岸にある穴まで渡してある。
ユレス:ふむ、これが正解ルートみたいだな。
GM:で、突然君たちの横の壁が開いて、騎士礼服を着たおっさんが出てくる。
GM/中年騎士:「よく来たな、ほれ」君たちに2V渡すと、おっさんは元の穴に引っ込んで、壁は元のように閉まる。
シフォン:……な、何だったんだろう。
ユレス:てゆーか、あれだけ苦労して2Vかよ!?
瑞子:まぁいい。立て札には何と書いてある?
GM:「要るものと要らぬものの違いを知れ。重荷を背負いて深き闇を行くものは奈落の底に落ちるだろう」
ユレス:荷物が重いと、橋が落ちるってことか。
レリィナ:全員の荷物を平均して持ったら、落ちないんじゃない? 私とか軽いし。

結局、荷重を平均化して何も捨てずに渡ることに成功。一定以上の荷重だと橋に穴が空いて真っ逆様、という仕掛けだった。

GM:さて、谷を渡り再び洞窟に入ると、道が二つに分岐してて、立て札がある。
「素早さに自信があるなら右へ。体が頑健であるなら左へ。どちらも無いなら運に頼れ。どちらを通るにしても、一人ずつ通れ」
ハドソン:はははは、俺はどちらでも大丈夫だ。(笑)
ゼフィ:俺は右に行く。体力には自信がないし。
GM:じゃあゼフィから。右に行くと扉がある。
ゼフィ:罠チェック。(ころころ)
GM:ない。ついでに鍵もかかってない。
ゼフィ:じゃ、開けて進む。
GM:通路があって、奥はT字路になってる。右はさっき通った崖と思しき断崖、左には通路が続いてる。
ゼフィ:左に曲がって進むぞ。
GM:すると通路の途中まで来たときに、ゴロゴロと音がして前方から大岩が転がってくる。
ゼフィ:はぁ!? 逃げる逃げる!
GM:じゃ、体力で判定してみて。
ゼフィ:(ころころ)成功! さっきの通路に入ってやり過ごす!
GM:岩は君の目の前を通り過ぎて、谷へと落ちていきました。
ゼフィ:もう来ないよな……。もう一回歩いていくけど。
GM:今度は何も転がってこない。とゆーわけで、ゼフィは無事に通過ね。

GM:じゃ次はハドソン。どっち?
ハドソン:俺は左。
GM:一本道の廊下が続いてる。特に何も見当たらない。
ハドソン:何があるのかな。
GM:体力で判定をしてくれ。
ハドソン:ん? (ころころ)成功?
GM:うん、君は何事もなく廊下を通過した。
ハドソン:……何も無かったぞ……?

左の道は空気感染形に改造された赤痢菌が浮遊している廊下だった。感染力は低いため、体が丈夫なハドソンに効くはずもなく。結局左を選んだのはハドソンとヘクター。残りは右を選択し、パーティーに害はなかった。

GM:しばらく行くと、突然目の前に二つの人影が現れる。
ユレス:敵か!?
GM:二人はハドソンを見ると、「おお、ハドソンじゃないか!」と言って駆け寄ってくる。
ハドソン:誰だ?
GM:君のスラム時代の乞食仲間で、ジョニーとラック。
ハドソン:知らないな、近寄らないでくれ。
ユレス:うわ、ちょっと偉くなったからって、かつての友を見捨てるとは。
瑞子:体も汚いが、心も汚いな。(笑)
シフォン:でも、なんでこんな所にいるんだろ。

二人は少し前に商人の衣服にドロをかけてしまい、その罪で捕らえられていたが、今度の大会で安上がりな障害としてこのダンジョンに配置されていた。身分が低いと、こんなちんけな犯罪でも捕まってしまうのだ。

ユレス:可哀想に。この前魔化長剣を買ったから、蛇エルフ戦で折れた長剣をくれてやろう。売ればいくらかにはなるだろ。
GM/ジョニー:「ありがとうごぜぇます、旦那。この御恩は一生忘れません」
ユレス:なんて純朴なんだ。同じ身分Lv−8でもハドソンとはえらい違いだ。(笑)

GM:ジョニー&ラックと別れてしばらく行くと、前方に二筋の小川があった。片方はドロで濁って、醜い魚が泳いでいる。もう一方は綺麗に澄んでいるけど、水中には何も見えない。
レリィナ:綺麗な水の方を水袋に入れる。
ハドソン:一応、二つの川の水質を調べておこう。毒が入ってるかも知れないし。
GM:どちらも毒はないね。ただ、濁った方はいろいろな生命力に溢れているけど、綺麗な方の水には全く生命力が感じられない。
ハドソン:ん……?
GM:あ、ゼフィ。そろそろ4時間だから、二回目の病状判定をやってくれ。
ゼフィ:(ころころ)……失敗……。(泣)
GM:これでLv3か。行動判定全てに−2だな。
ユレス:ゼフィはここに置いていこう。調子が悪くなったら帰らせよう。足手まといになるだけだ。
レリィナ:うん。ゼフィをここに置いて、私たちは先に進もう。
ゼフィ:……ちっくしょ……。


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プロローグ

第一章:取り敢えず冒険してみる

第二章:神様だってミスはする

InterMisson

第三章:ロシュフォール商会本店前ひき逃げ事件

第四章:逃亡の後に……

Intermisson 2

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