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この町では、夕方決まった時間に放送があります。漁業放送です。
漁船の状況を町の人達に知らせるのです。乗組員の家族は、この
放送を心待ちにしています。「第8○○丸、第4回目操業中」とか
「第11□丸、調査中」とか、ごく短い情報です。でも、この言葉の中
に、家族への特別なメッセージがあるんだと聞いたことがあります。
家族にだけわかる暗号なのかもしれません。 子ども達は、暗くなっ
た海岸で遊びます。たまたま、海に落ちたボールをひろうため船に
乗り移ります。その時、空の北斗七星を見つけました。夢中でドッヂ
ボールをしているときは気づきませんでしたが、船に
のると、動きが
止まります。目線は、暗い海へ、周囲の黒い山
陰へ、そして、暗い空
へ・・・・。子どもたちの体の動き、心の動きが、手にとるようにわかりま
す。『5人でぼけっと空をみていました。』、空に見えた北斗七星は、と
ても大きく美しかったのでしょう。言葉をなくすほどの美しさだったので
しょう。作者は、最後に『オリオンざもありました。』と書きました。しば
らくの間、船に揺られながら空をながめていたのでしょうね。