の授業


            
           遠 い 友 よ
 
 
                  
 
                         蔵 原 伸 二 郎
 

      
       風のなか
       まひるの山の 峠で出あった
       あなたよ

       こかげの岩のかげで
       二人はしばらく 蝉の声に
       耳をかたむけ
       遠い雲をみていたっけ

       あなたはのぼり道 私は下り
       あのひとときの出会い

       短い対話
       あかるいイメージ

       風のなか「さようなら」
       桔梗が一本ゆれていたっけ
       
       あなたは やがて
       白い夏帽子に真昼の太陽をうけ
       ○のように
       すすきのかげに消えていった



       山道を登りつめ峠につくと、視界が急に広がります。誰もが
       優しい気持ちになり、みんなで広々とした風景を共有します。
       眼下に今登ってきた道が細く小さく見え、反対側には、これ
       から行こうとする村や町や畑が見えたりします。峠では、時
       間はゆっくり流れます。登ってきた道に分かれを告げるには、
       時間が必要なのです。作者は、白い夏帽子のあなたとどんな
       話をしたのでしょう。やがて、白い夏帽子は、緑の灌木の間に
       見え隠れしながら遠ざかります。蝶のように軽やかに山道を
       登って行く「あなた」に、過ぎし日の自分を重ねたのでしょうか。
       それとも、遠い昔の出来事をおもいだしたのでしょうか。白い
       夏帽子が、いつまでも頭からはなれません。


      
 発問その1
       ○に言葉をいれましょう。

          

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