の授業

  
       作品第1004番

                          宮 沢 賢 治
 


    今日は一日あかるくにぎやかな雪降りです
    ひるすぎてから
    わたくしのうちのまはりを
    巨きな重いあしおとが
    幾度ともなく行きすぎました
    わたくしはそのたびごとに
    もう1年も返事を書かない
    あなたがたづねてきたのだと
    じぶんでじぶんに教えたのです
    そしてまったく
    それはあなたのまたわれわれの足音でした
    なぜならそれは
    いっぱい積んだ梢の雪が
    地面の雪に落ちるのでしたから


    朝から雪の降り方がいつもと違うことに気づいた作者は、春の訪れを確信
    します。作者は、北上盆地の花巻に生まれました。寒冷地での農業の研究
    に頭を悩まし、土壌の研究、寒さに耐える品種の普及を目指しました。作者
    は、冬の雪にはこまりはてていました。外で仕事をしようにも、積もった雪は
    あまりに多く、しかたなく屋内でできる仕事をしながら春を待たねばならなか
    ったのです。大きな重い足音を聞くたびに、まるで、待っていた恋人との1年
    ぶりの再会を喜ぶかのようです。北国の人達が春を待つ気持ちをこの詩か
    ら感じとれた時、私達の思いやりの気持ちが少しだけ豊かになったと言える
    でしょう。題は、音楽の題名のようです。作者は、作曲もし、音楽にも関心を
    持っていました。作曲家が作品に番号をつけるのにならったものでしょう。


   (1)この詩を書いたのは、いつごろですか。

       午後1時ころ     午後3時ころ    午後5時ころ

   (2)そう思ったわけを書きましょう。


   (3)足音を声にしてください。


   (4)作者の見た情景を話してください。

    



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