の授業


            木  
                  
 
                         草 野 心 平

      
       
葉っぱをおとした
       冬の木はいい。
       はだかの木々のすがたはいい。
       ごつごつした古い木などはとくにいい。
       強くて落ちついていてじつにいい。
       霜柱にかこまれて
       寒さの中に立っている。
       はだかの木々の美しさ。

       枝々の幹の中を
       力が流れているような気がする。
       夢がいっぱいつまっているような気がする。
       ○いほのおが燃えているような気がする。


     
 

       人は、春の花、夏の新緑、秋の紅葉を美しいという。作者は、自分
       を飾るものをすべてなくした冬の木を美しいという。作者の目は、
       木の内へ注がれる。目に見える美しさは、実は、中から湧き出して
       くるものなのだ。すべての飾りを取り去った時、本当の姿が現れる。
       その時、『ごつごつした古い木などはとくにいい』、『強くて落ちつい
       ていてじつにいい』と作者は言う。美しさとは何だと考えさせられて
       しまう。やがて来る春のために、静かに確実に力を蓄え、準備をし
       ている冬の木は、厳しい状況の中で、さらに美しさを際立たせる。
       何を美と感じるかは、人によって違う。春の花も良し、夏の新緑も
       秋の紅葉も良し、そして、冬の裸の木も、また、良い。木は、人間達
       の思いとは関係なく、黙々と命を繋ぐ営みを今日も続けている。


       発問その1

       最後の行、○いほのおは、色を描いています。
       炎の色を決め、なぜその色か、お話しましょう。
     

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