の授業


            顔  
                  
 
                         串 田 孫 一

      
       うちのぴかそはかおばかりかいている
       人の顔らしいものもあるが
       鬼の顔  蛇のかお
       春の顔  夏のかお

       春は風の中を
       匂いのする埃の中を
       咳しながら
       顔をしかめてやって来た

       夏は来なかった
       雨が降ったから
       見たときはもう座っていた
       花の中に 膝をかかえて
       横向いていた

       うちのぴかそは
       顔の外に口をかき
       耳の穴を三つかく
       ところが今日は虫があばれ
       下腹がうねうね痛み
       枕をつまんで泣いている



    (1)解釈
       うちのぴかそ君は、『春の顔だよ。』、『夏は、こんな顔なんだよ。』
       と話しながら絵を描いているのでしょうか。いえいえ、ピカソ君はた
       だがむしゃらに線を引いています。見ている家族が、ムムム、これ
       は、鬼か、蛇か、春か、夏か。家族は、その線を見て思います。
       『春は咳をしながら、顔をしかめてやって来たんだな夏は、知らない
       間に花の中で座り込んでいるぞ。』、ぴかそ君の絵は、天才ピカソも
       真似できないような自由で大胆な描きぶりです。子どもの表現は、と
       ても素直で厳しくて、私達大人をハッとさせます。子どもから発信され
       る様々なメッセージをできるだけたくさん忠実に受信できる大人であ
       りたいと思っています。ぴかそ君を見つめる家族の愛情が、生き生き
       とちょっぴりユーモラスに伝わってきます。
    (2)発問
       その1 『ピカソ君になってかいてみましょう。』
      
                その2 『黒板にはって、一番ピカソ君の絵に地下ものをさがしましょう。』
    
       その3 『ピカソ君を見ている人の気持ちを考えてみましょう。』

       *今日も顔をかいているなあ。
       *今日の顔は、蛇かな?
       *今日のは、羽野の顔みたいだ。
       *今日のピカソ君、機嫌が悪いなあ。
       *だいぶん大きくなったなあ。


        周りの人たちがやさしく見ている様子が伝わってきます。みんなでピカソ君
        を見つめる家族の人たちについて話し合いたいですね。


    

    
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