詩の授業

  
  

 春のうた

    草野 心平

 

  かえるは冬にあいだは土の中にいて春になると地上に出てきます。

  そのはじめての日のうた。

 

 ほっ まぶしいな。

 ほっ うれしいな。

 

 みずは つるつる。

 かぜは そよそよ。

 ケルルン クック。

 ああいいにおいだ。

 ケルルン クック。

 

 ほっ いぬのふぐりがさいている。

 ほっ おおきなくもがうごいてくる。

 

 ケルルン クック。

ケルルン クック。

 

 

(1)教材解釈

   前話の2行には、一般的な説明が書かれています。『その』は、前の文全体を受けています。
 特定のかえるというのではなく、一般的なかえると考えられます。ですから、名前がありま
 せん。冬眠していたかえるが地上に出てきた初めての日は、こんな様子なんですよと私たち
 に前置きしています。春の『うた』は、歌か詩か?言葉は5音と七音が主であり、とてもリ
 ズムが良く音楽的です。

(2)発問と指示

 @『詩を覚えましょう。』

  前書2行も覚えましょう。詩の本文は、2行の前書があって成り立っています。全部

  で『春のうた』です。

  ☆板書する。子ども達も一緒にノートに書く。教師はゆっくり板書し、板書し終わった時、子ど
 ももノートに書き終わるのがいいでしょう。『聞く』、『考える』、『話す』、それぞれの場
 面が区別される授業をしたいと思います。そのために、『書く』作業が個人差も大きくだらだ
 らします。

  ☆黒板を見ながら詩を覚えます。

   一行消しましょう。みんなで読みます。もう一行消します。だんだんと黒板から文字を消して
 いきます。最終的に全文消した黒板で、指さししながら暗唱します。児童の成熟度、詩の難易
 度を考えながら、様々に工夫できます。

 A『かえるは、全身で春を感じています。五感で感じたものを見つけましょう。』

  視覚・・・まぶしいな  聴覚・・・そよそよ  触覚・・・つるつる

  臭覚・・・いいにおい  味覚・・・?????

  冬眠中は、五感は機能していません。目覚めて地上に出ると働き始めます。たくさん

  の感覚が一度に動いてパニックになるかも知れませんね。文にかくと順番にならびますが、実際
には同時に起こっていることです。

 B『視点はどこにありますか。』

  かえるの視点で書かれています。話し手を設定したとしても、かぎりなくかえるに寄

 り添っています。かえるが見た、聞いた、触った、感じたことを言葉にしています。『ケルルン 
クック』は、かえるの言葉です。なんと言っているのでしょうか。

 C『うごいてくるのは、雲か蜘蛛か?』

  子ども達にどちらかを選ばせて、話し合いをしましょう。これまでの解釈は、雲です。でも、私は
 ずっと以前から蜘蛛と思っています。子ども達の話し合いをさせるのが目的です。決着が着かなく
 てもかまいません。文章から理由を探し、自分の考えをまとめ討論をしましょう。私の意見です。
 冬眠から目覚めた時、お腹がすいています。すぐには感じなくても、しばらく動いていれば空腹を
 感じるでしょう。視点は、かえるです。かえるの方へ動いてくるのですから、空の雲とは考えにく
 い。しかも、目線は地上です。『いぬのふぐりがさいている』、つぎに『おおきなくもがうごいて
 くる』です。いぬのふぐりのあいだに『大きな蜘蛛』がみえたのではないでしょうか。かえるは、
 蜘蛛をえさにしています。最後の『ケルルン クック』は、『ああ、うまかった。』、『まんぷく、
 まんぷく。』とでも、鳴いたのでしょうか。

(3)留意点

 @しらみつぶしはやめよう

  文学や詩を読むとき、文章を次から次へと読み取っていくのは、つかれます。子ども達は、3行目
 ぐらいでダウンします。後は、惰性で読んでいきます。文学を読む楽しさをなくしてしまいますね。
『ほっ まぶしいな。』と書いてありますが、だれがまぶしかったのですか。『まぶしいって、どん
な様子ですか。』、『ほっ うれしいな。』、だれがうれしかったのですか。何がうれしかったので
すか。ここまでくると、すごく疲れて考えなくなってしまいますね。

 A想像を豊かにし、創造を作り出す

  言葉は、読み手の想像を作り出し自分の考えを創造させます。自分の世界を創りだしますが、自分勝
 手な世界を全部認めてしまうわけにはいきません。授業で目標にすることを明確にして、子ども達の
 読み方を少しでも豊かにしていかなければなりません。子ども達の意見は大事にしますが、間違いや
 読み方の貧弱さは、常に検証していく必要があります。

 

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