の授業

  
         春

                          井 伏 鱒 二
 


       てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った。

  
   
  詩人は、どこで蝶を見ているのでしょうか。眼下に韃靼海峡を見下ろす
  樺太の岸壁からか。それとも、大陸の浜辺からか。それとも、海峡の真
  っただ中を行く船の上からか。蝶は、海峡を吹き渡る強風の中を飛んで
  いきます。時には海面すれすれに押さえつけられ、時には、空中高く吹
  き上げられながら、たった一匹、飛んでいきます。詩人は、海峡の大波
  に揺れる船の上で、北の台地を目指して飛んでいく一匹の蝶に、自分を
  重ねているのかも知れません。空の青、海の群青、そして、白い波頭。
  蝶は、白か、黒か、黄色か?鮮やかな色彩が、読み手脳裏を駆け巡りま
  す。無限に変化する青、大自然の命の営みを感じまう。春、新しい命の祭
  りが始まります。北の大地のたどり着いた蝶は、仲間達に出会い、楽しく
  踊っているのでしょうね。


  (1)あなたは、どこで、この蝶をみていますか。
     読み手の位置を明確にしましょう。読み手の位置を特定しようとする
     ことが、読みを深くする。

  (2)蝶は、何色か?
     蝶の色をとうことで、海、空、波の色を感じ取る。そして、蝶の色を特定
     しようとする努力が、イメージを豊かに作る。それぞれ、ちがっていい。

  (3)  
    






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