邂 逅
少女は振り向いた。背後からの視線を感じたからである。
だが、そこには視線を向けるものも無く、今歩いて来た街道が続くだけである。
彼女は首を傾げ、前を向いて歩き出した。また、後ろからの視線を感じる。
暫くは後ろを気にしながらも無視して歩いていたが、たまりかねて声を掛けた。
「私に、何か用が有るのですか?」
途端に辺りの気配がざわめいた。少女は再度振り向いた。
すると、先程までは影すら見せなかった少女が自分を見ており、目が合った。
少女は笑っていた。
「あなたは……誰なのですか?」
その少女の姿は自分とは色違いの同じ模様の衣装を身に纏っており、
そしてこれも自分の物と同じ模様の施された、小振りの刀を背中に帯びていた。
そして、その少女はその口から自分と同じ声を発した。
「あたし? あたしはあんただよ、ナコルル。」
最後の名前は自身のものか、それとも彼女の目の前の人物を指したものか……。
自分と同じ人物だと言われた少女は戸惑った。それを見て、少女は満足げに笑った。
「これから、よろしくね。」
それだけ言って、彼女は走って行った。最後にこっちを向いて手を振る。
一人取り残された少女はつられて手を振り返した。
「……あの人が、私? 名前も、一緒……」
彼女は、確かにナコルルと言った。それは自分の名前でもある。
彼女の笑った顔が妙に印象に残った。自分の中の影が表に出たような、
それでいてそれが自然なように違和感の無い、そんな笑顔だった。